業務改革を進めるための3つの方法/3つの対象/3つの保険

何度も煩雑な作業をやらざるを得ないことにつらさを感じてしまう性分なので、普段から業務改革を率先して進めることが多い。深く考えていこうとすると考えるべきことは多いものの、ここを押さえておけばスムーズに進められると考えていることがある。その内容を3つの方法/3つの対象/3つの保険としてまとめてみる。

3つの方法

煩雑な作業を簡単にしようと思ったときに、その解決には自動化/標準化/スキル化の3つがある。

自動化

これはその言葉の通り、インプットさえしてしまえばブラックボックスの自動処理によってアウトプットが出てくるような形である。してしまって問題ないのであれば、このような形にしてしまうのが最も望ましい。処理をソフトウェアに委ねることによって、個人に由来する品質の揺れがなくなる。

標準化

次は、処理は人間で行うものの、その難易度を下げる方法としての標準化である。ある程度決まった手順やフレームワークに則ることで、誰がやっても一定の品質が担保される。個人のスキルレベルへの依存も小さい。自動化と比較すると品質に若干の差異は発生するが、逆に自動化するほど定型化されていないものを柔軟に取り込める形でもある。

スキル化

最後に、集団のスキルを全体的に向上させることによって、専門知に基づいて処理をされることで方法にばらつきがあっても品質を担保する方法である。上の2つよりも対応としては難しいが、最も応用性が高いものになる。また、自動化や標準化は手続きの合理性に対する疑問を失わせる方向に機能するので、さらにインプットやアウトプットが変わったときにも適応が可能な形でもある。

3つの対象

煩雑な作業を課題として解決しようとしたとき、その課題としてどこまでを対象にするかによって、運用で回避/ボトムアップの改善/バックキャストの改革の3つがある。

運用で回避

問題発生自体を解決しにいかずに、問題発生時の事後対応を円滑にするのが運用で回避である。基本的にはこれはなるべくやめる方がよいが、ここでとどめるか先にまで踏み込むかは、その作業が発生する頻度と発生時の対応の負荷によって考えればよいだろう。

ボトムアップの改善

次に、問題自体は解決しにいくが、その問題が解決すればいいという形のボトムアップの改善である。問題の発生自体をなくすか、問題の発生頻度を下げるか、解決の効果にはグラデーションがある。

バックキャストの改革

最後に、その問題を解決するついでに、周囲にある問題も合わせて解決するという形のバックキャストの改革である。この解き方で進めようとするには、今の運用をどう円滑にするかという視点ではなく、本来的に実現すべきアウトカムを実現するための理想像を描いて、そこと現状の差分を埋めに行く必要がある。本質的な課題設定のスキルが求められるので、やや難易度は高いが、当然効果は大きくなる。

3つの保険

方法と対象と合わせて考えないといけないのが、業務改革によって短期/中長期に新たな問題が発生しないかということである。そこで、保険としてスコープ調整/高度化の抑制/人材育成の3つに注意する必要がある。

スコープ調整

どこまでをスコープにすべきかは結構悩ましい話だが、指標としてはROIが重要な観点である。問題自体の発生頻度と影響を起点にして、解決の際の効果の程度、それから運用設計および運用変更をする際のコストを考えることになる。3つの対象をいずれを取るかはここが基準になるので、意図的に運用で回避でとどめるべきときもあれば、頑張って改革をしにいくべきときもある。

高度化の抑制

運用としてはある程度整理できたとしても、その実行をするのが難しかったり、運用変更をするのが難しかったりすることがある。まず、その部門に採用や異動で新規参入者が生じたときに、それでも運用を回せるかは大事な観点である。また、運用設計者が頑張って設計をしても、その人が異動や退職でいなくなったときに運用変更ができないリスクもある。RPAが普及してきたときに「野良ロボット」が話題になっていたが、仮に運用設計者にはできるとしても、そのレベルまで高度化させないことは案外重要である。

人材育成

上記では人員の流動に伴ってリスクが発生するという話であったので、逆に言うとみんなができる状態であればリスクにはならない。ということで設計能力を育成するような形を取るか、あるいは人員配置の際に最低限の知識/スキルのスクリーニングを行うことが予防策になり得る。また、もし育成をベースにするのであれば、スキルアップは一朝一夕で進むわけではないので、ある程度中長期で考えないといけないのも意識しておくとよい。

最後に

ここまで、どう解くか、どこまで解くか、何に気を付けるべきかについて簡単にまとめてきた。個別の業務改革の際はこれらを考えればよいが、一方でどこまで解くかに関するリソース配分を適切にしておくことも大事に思う。なぜなら、業務が大量であると、余裕がないので運用で回避を選択し、運用で回避が蓄積するので業務がさらに増えるというループに陥りかねないからである。

日常の業務のなかで、どこまでの時間を改革に割けているかを意識し、状況に応じてやめる業務を探すのか、業務の配分を変えるのか、あるいは人員を増強するのかも含む、全体のマネジメント機能の良し悪しが業務改革の成果を決めるのだろう。